こうした場合でも、「登記していないから違法建築だ」「売れないので解体するしかない」とすぐに結論を出すのは禁物です。まずは何が一致しておらず、どの手続きや調査が必要なのかを分けて確認することが大切です。この記事では、京都市内の古い戸建住宅を念頭に、建築と不動産の両面から確認の順序を整理します。

本記事で扱う内容(目次)

  1. 最初に区別したい「未登記」と「建築確認」の違い
  2. 現地と資料を照合する五つのステップ
  3. 古い増築が見つかったとき、すぐに工事を始めない理由
  4. 売る・直す・貸す・残す・解体する――五つの選択肢を公平に比べる
  5. 費用の見積もりは「三つの箱」に分ける
  6. 京都で相談する前に用意したい資料

最初に区別したい「未登記」と「建築確認」の違い

登記簿に増築部分が反映されていない状態

建物の登記事項証明書には、所在、家屋番号、種類、構造、床面積などが記録されています。過去に増築して床面積などが変わったのに、その変更が登記に反映されていなければ、現況と登記記録に差が生じます。すでに登記されている建物では、増築によって表題部の記載事項が変わった場合、一般的に「建物表題部変更登記」を検討することになります。新築時から建物自体が登記されていないケースとは手続きが異なるため、最初にどちらの状態かを確かめます。

建築確認の有無は別の論点です

建築確認は、工事計画が建築基準関係規定に適合しているかを確認する制度です。登記が済んでいることと、建築確認を受けたことは同じではありません。逆に、登記が更新されていないという一点だけで、当時の工事が直ちに建築基準法違反だったと断定することもできません。増築当時の法令、建物の規模、所在地、工事の内容などによって必要な手続きが異なります。確認済証や検査済証が見つからない場合も、「交付されていない」と「書類を紛失した」は区別して考えます。

固定資産税の資料は、登記・建築確認とは別の資料です

固定資産税の課税資料に記載された家屋の面積は、登記簿の面積と異なることがあります。課税されているからといって登記が済んでいるとは限らず、課税資料に面積が記載されているからといって建築確認が済んでいるとも限りません。課税資料は現況把握の手掛かりになりますが、登記・建築確認とは目的が異なります。資料の数字が違うときは、どれか一つを正解と決めつけず、差が生じた理由を調べます。

現地と資料を照合する五つのステップ

1.建物の登記事項証明書と図面を集める

最初に土地・建物の登記事項証明書を取得し、建物図面や各階平面図の有無も確認します。建物の所在、種類、構造、階数、各階床面積を控え、現況の間取りと比較します。登記上の床面積と、不動産広告の延床面積、固定資産税資料の面積は測り方や作成目的が異なる場合もあるため、単純に数字だけを比べて増築面積を確定しないようにします。

2.いつ、どこを、どのように増築したかを調べる

古い写真、工事見積書、請求書、設計図、住宅ローンの書類、家族の記憶などから、増築した時期と範囲を推定します。台所や浴室の拡張、縁側の囲い込み、二階の増設、離れや倉庫の新設では、建物の扱いも必要な確認も異なります。増築部分と既存部分の取り合い、雨仕舞い、構造上のつながりは、外観だけで判断できない場合があります。分からない点は「不明」と記録しておく方が、後の説明で誤解を生みにくくなります。

増築部分がある古い木造住宅の外観

3.京都市の建築関係資料を確認する

京都市内の建物であれば、建築計画概要書や確認・検査に関する資料が残っていないかを確認します。京都市は2026年3月から一部の建築計画概要書等についてインターネットでの電子閲覧を開始しており、対象年代や利用者登録などの条件があります。すべての年代・すべての建物の資料がオンラインで見られるわけではありません。窓口での調査が必要な場合もあるため、物件所在地と建築時期を整理して相談します。概要書が見つからないことだけをもって、違反の有無を断定しないことも重要です。

4.土地家屋調査士・建築士に役割を分けて相談する

建物の表示に関する登記の調査や申請については、土地家屋調査士が相談先となります。一方、建築確認の要否、既存建物の安全性、増築部分の構造、今後の改修計画については建築士などの専門家の判断が必要です。不動産会社は、調査結果を踏まえて販売条件、買主への説明、価格、売却時期を整理します。一つの専門家だけで全論点が完結するとは限りません。

5.先に出口を決めず、必要な調査費を見積もる

「売るつもりだから登記だけ直せばよい」「貸すから建築面の確認は不要」という進め方は避けたいところです。現況調査、必要な書類の取得、建物の表示変更、改修費、売却条件への影響を一度並べ、どの調査から始めれば意思決定が進むかを整理します。費用をかける順番を間違えると、不要な解体や工事に進んでしまうことがあります。

古い増築が見つかったとき、すぐに工事を始めない理由

既存の建物と増築部分の安全性を分けて見る

増築した部分の屋根と外壁の接合部から雨水が入りやすくなっていないか、床に不自然な沈みがないか、柱や梁の接続はどうなっているかなど、建築面の確認が必要です。ただし、目視だけで構造安全性を保証できるわけではありません。傷みが疑われるときは、必要な範囲の調査を専門家に依頼します。古い建物であっても、適切な維持管理と補修で使い続けられる場合があります。

2025年4月の制度改正も踏まえて計画する

2025年4月1日から建築基準法等の改正により、木造建築物の建築確認・検査の対象や審査省略の範囲が見直されました。二階建て住宅などで大規模な修繕・模様替を計画する場合、工事内容によって建築確認の要否を検討する必要があります。過去の増築を確認する話と、これから行う改修工事の法的手続きは分けて判断します。なお、建築確認が必要かどうかは個別条件で変わるため、面積や工事名だけで決めず、計画前に建築士・所管行政庁等へ確認してください。

担当者が室内の床の寸法や状態を確認している様子

売る・直す・貸す・残す・解体する――五つの選択肢を公平に比べる

売る:現況と調査結果を明示して条件を組み立てる

売却では、増築部分の位置・面積・時期・資料の有無を整理し、把握している事項を正確に伝えることが基本です。登記の整備や建築面の調査が必要となる場合もありますが、何を売主側で実施するかは物件と取引条件によります。買主が住宅ローンを利用する場合など、金融機関や買主の意向が条件に影響することもあります。調査前に「未登記でも問題なく売れます」「必ず登記を直さないと売れません」と一律に説明しないことが大切です。

直す:投資額と将来の使い方を結びつける

自宅として再利用する、親族が住む、あるいは賃貸募集のために改修する場合、増築部分を含む建物全体の状態を確認します。雨漏りなどの緊急修繕と、間取り変更や設備更新のような選択的工事は分けて考えます。古い増築部分をそのまま残して大規模な改修を行うより、部分撤去や使い方の変更が合理的な場合もあります。工事前に法的手続きと構造面の確認を済ませ、見積もりを比較します。

貸す:家賃収入だけでなく管理責任も見る

賃貸化は、売却せずに保有しながら収益化できる選択肢です。ただし、借主の安全や設備の維持管理が必要で、増築部分の不具合を放置したまま貸し出すことは避けるべきです。想定家賃、修繕費、募集費用、空室期間、管理費、固定資産税などを織り込み、年間の実質収支を試算します。賃貸借契約の条件を決める前に、建物の状態と説明すべき事項を確認します。

残す:使わない期間の管理費と将来の選択肢を考える

すぐに売却も賃貸もしない場合、定期的な通風、雨漏り確認、庭木の管理、防犯対策などが必要です。家族の思い出があるから残すという判断自体は尊重されるべきですが、誰が管理し、費用を負担し、いつ再検討するかを決めておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。建物の状況が悪化する前に、年単位で再点検することをお勧めします。

解体する:更地の価値と解体後の負担を比べる

増築部分に大きな問題がある場合でも、直ちに建物全体の解体が最善とは限りません。解体費用、敷地の接道状況、建て替えの可能性、解体後の土地利用、固定資産税の取扱いなどを総合的に確認します。古い建物を撤去した結果、想定していた建築ができないと分かるケースを避けるため、解体前に不動産・建築双方の調査を行うことが重要です。解体の判断は、修繕費だけではなく土地の出口から考えます。

費用の見積もりは「三つの箱」に分ける

調査・書類整備の費用

登記事項証明書、図面、役所の資料、現況確認、専門家への相談や測量など、状況を把握するための費用です。最初からすべての調査を行うのではなく、売却や賃貸の意思決定に必要な順序を確認します。

是正・修繕・撤去の費用

登記記録の変更手続き、建築上必要な対応、雨漏り等の修繕、増築部分の部分撤去など、現況に応じて発生し得る費用です。登記を直せば建物の安全性が改善するわけではなく、修繕したから登記の問題が解決するわけでもありません。それぞれを別の項目として扱います。

売却・賃貸・保有に伴う費用

仲介手数料、賃貸募集費、管理費、空室期間の負担、税金、将来の追加修繕などです。例えば修繕に200万円かかるとしても、それで売却価格が200万円上がるとは限りません。反対に、必要な資料が整うことで買主の検討が進みやすくなる場合もあります。価格や費用は現地条件で大きく変わるため、根拠のない定額モデルを当てはめないことが重要です。

登記事項証明書や古い図面などの資料を机に並べて確認している様子

京都で相談する前に用意したい資料

可能であれば、土地・建物の登記事項証明書、固定資産税の課税明細、古い建築図面、建築確認に関する書類、増築前後の写真、過去の工事見積書などを一か所に集めておきます。全部そろっていなくても相談はできます。「いつの増築か分からない」「図面がない」といった情報も、重要な現況情報です。

京都市では建築計画概要書等の電子閲覧サービスと窓口閲覧が案内されています。ただし、閲覧できる年度や書類の範囲には制限があります。制度や窓口の運用は変わるため、申請前に京都市の最新案内を確認してください。京都市外の物件では、所管行政庁が異なります。京都市伏見区・山科区・南区などの住宅でも、道路条件、用途地域、建物の履歴は一軒ごとに異なります。所在地だけで判断せず、対象物件の資料に基づいて調査することが必要です。

Q&A:よくあるご質問

Q1. 増築部分が未登記なら、相続した実家は売れませんか?

A. 未登記部分があるという事実だけで、一律に売却不能とはいえません。ただし、買主の判断、融資、契約条件、登記や建築面の確認に影響する可能性があります。現況と資料の差を把握し、必要な説明と対応を検討します。

Q2. 固定資産税を払っていれば、増築部分も登記済みですか?

A. そうとは限りません。課税資料と登記記録は目的が異なります。建物の登記事項証明書を取得し、記載内容を確認してください。

Q3. 建築確認済証が見つからない場合は違法建築ですか?

A. 書類が見つからないだけでは断定できません。建築当時の制度、工事内容、確認・検査記録の有無などを調べる必要があります。京都市の建築関係資料の閲覧制度も確認先の一つです。

Q4. 登記の相談とリフォームの相談は同じ専門家でよいですか?

A. 役割が異なります。表示登記の手続きは土地家屋調査士、建築上の適法性や安全性・改修計画は建築士などに確認し、不動産の出口については宅地建物取引業者と整理すると進めやすくなります。

Q5. 古い増築部分を解体してから売る方が得ですか?

A. 必ずしもそうではありません。部分撤去費用、建物全体への影響、土地の建築条件、買主の希望を比較する必要があります。解体後に建て替えが難しいと分かることもあるため、先に調査する方が合理的です。

まとめ――「書類がない」ことより「何が分からないか」を明確に

相続した実家に古い増築があっても、すぐに売却や解体を諦める必要はありません。まず登記の現況、建築確認の記録、課税資料、実際の建物の状態を分けて確認し、分かっていることと分からないことを整理します。そのうえで、売る・直す・貸す・残す・解体する五つの選択肢を、費用・安全性・将来の利用可能性から比較することが大切です。

トスクホーム(株式会社京都アシスト)では、京都市内を中心に、建築と不動産の両面から実家や空き家の活用方法を検討しています。「昔の増築部分が気になる」「図面が見つからない」「売却前にどこまで確認すべきか分からない」といった段階でも、まずは現況とお手元の資料を整理するところからご相談ください。売却や工事を前提にせず、必要な調査と選択肢を一緒に確認します。

参考・確認先(2026年10月19日確認)

※ 本稿は一般的な判断の順序を紹介するもので、個別物件の適法性や登記の要否を確定するものではありません。建築・登記・税務の具体的な判断は専門家・所管行政庁へご確認ください。

この記事に関するご相談はこちら

TSC HOMEでは、相続・空き家に関するご相談を初回60分無料で承っております。「昔の増築部分が気になる」「図面が見つからない」といった段階でのご相談も歓迎です。

無料相談のお申込み