2024年4月1日から相続登記は義務化されました。法務省の案内では、2024年4月1日より前に発生した相続についても対象となり、相続で不動産を取得したことを知っている場合、原則として2027年3月31日までに相続登記を申請する必要があります。2026年9月時点では、その期限まで約半年です。

ただし、ここで大切なのは「急いで家を売らなければならない」と考えないことです。相続登記の期限と、実家を売る・貸す・残すといった活用方針の決定は、関連してはいるものの、同じ問題ではありません。まず権利関係を整理し、そのうえで建物の状態、家族の意向、維持費、地域性などを確認してから、実家の今後を比較する。この順番で考えることで、判断を急いだことによる後悔を減らしやすくなります。

この記事では、京都で実家を相続した方に向けて、相続登記の期限を確認するとともに、その後の「実家をどうするか」を5つの選択肢から整理します。

本記事で扱う内容(目次)

  1. 相続登記の義務化とは?
  2. 最初に確認したいのは「誰の名義になっているか」
  3. 登記が終わっても、実家の問題は終わりません
  4. 相続した実家には5つの選択肢があります
  5. 京都で実家を整理するときは「不動産」と「建物」を分けない
  6. 2026年秋から始めるなら、この順番で整理する
  7. 京都市には空き家の相談制度もあります

相続登記の義務化とは?

相続登記とは、不動産の所有者が亡くなったときに、土地や建物の名義を相続した人へ変更する手続きです。

以前は相続登記を行うかどうかが事実上、相続人の判断に委ねられていました。そのため、何代にもわたり名義が変更されず、現在の所有者が分かりにくくなった土地や建物が全国で増えてきました。こうした所有者不明土地の問題を背景として、2024年4月1日から相続登記が義務化されています。

2024年4月より前の相続も対象です

注意したいのは、義務化後に発生した相続だけが対象ではない点です。

法務省の案内では、2024年4月1日より前に相続した不動産についても、相続登記が済んでいなければ制度の対象になります。相続によって所有権を取得したことを知った日から3年以内が原則で、制度開始前の相続については2027年3月31日までという経過措置があります。

たとえば、10年前に父親が亡くなり、京都市内の実家を相続したものの、登記簿上は父親名義のままというケースも確認が必要です。

正当な理由なく義務に違反した場合には、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。ただし、相続人の人数や遺産分割の状況によって必要な手続きは異なりますので、具体的な判断については法務局や司法書士などの専門家にご確認ください。

最初に確認したいのは「誰の名義になっているか」

実家の今後を考えるとき、「売却査定はいくらか」「リフォームするといくらか」と、金額から考え始める方も少なくありません。しかし、その前に確認しておきたいのが所有者です。

法務局で登記事項証明書を取得すれば、現在の登記名義人を確認できます。親名義のままなのか、すでに相続人へ変更されているのか。土地と建物で所有者が異なっていないか。共有名義になっていないか。隣接地や私道の持分がどうなっているか。

京都の古い住宅では、土地と建物だけを見ればよいとは限りません。連棟住宅、路地奥の住宅、私道に接する住宅などでは、売却や建て替え、修繕を検討する段階になってから権利関係の確認が必要になることがあります。

そのため、「登記を済ませること」と同時に、「どの不動産を、誰が、どのような権利で所有しているのか」を整理しておくことが重要です。

登記が終わっても、実家の問題は終わりません

相続登記が完了すれば、大きな課題の一つは解決します。しかし、実家が空き家のままであれば、その後も管理は続きます。

京都市は2026年9月の案内でも、人が住まなくなった空き家は傷みの進行が早く、長期間放置すると内部の劣化が進む一方、外からは危険性が分かりにくいと注意を促しています。雨漏り、給排水設備、換気不足による湿気、庭木、害虫、外壁や屋根など、空き家には定期的な確認が必要です。

つまり、名義変更が済んだからといって、そのまま放置してよいわけではありません。相続登記を一つの区切りとして、実家の状態を確認し、今後の方向性を家族で話し合う機会にするのが合理的です。

ご夫婦が専門家と実家の今後について相談しているイメージ

相続した実家には5つの選択肢があります

実家を相続すると、「住まないなら売るしかない」と考えがちですが、実際には大きく5つの方向があります。

1.売る

今後、自分や家族が住む予定がなく、維持管理を続ける必要性も低い場合は、売却が選択肢になります。ただし、売却価格だけで判断するのではなく、境界、接道、建物の状態、残置物、権利関係などを確認したうえで、仲介による売却と不動産会社による買取の違いも比較することが重要です。

2.直す

建物の状態や立地によっては、修繕・リフォームを行い、自分たちで使う方法もあります。思い出のある家を残せる一方、工事費だけでなく、今後の維持費や耐震性、断熱性、設備更新まで含めて考える必要があります。「直せるか」と「直す価値があるか」は別の判断であり、建築的な状態と不動産としての価値を同時に確認すると比較しやすくなります。

3.貸す

賃貸需要が見込める場所であれば、賃貸住宅として活用する方法もあります。ただし、貸すためには一定の修繕が必要になることがあり、家賃収入だけでなく、修繕費、管理費、空室期間なども考慮する必要があります。京都市では、空き家の所有者と借りたい・買いたい人をつなぐ「京都安心すまいバンク」も運用されています。制度内容や対象条件は変更される可能性があるため、利用時には京都市の最新情報をご確認ください。

4.残す

すぐには使わないものの、「将来子どもが住むかもしれない」「家族の事情が決まるまで残したい」というケースもあります。残すこと自体は間違いではありませんが、「何となく残す」のと「期限を決めて残す」のとでは大きく違います。たとえば「2年間は維持し、その時点で家族全員でもう一度判断する」と決めておけば、管理が無期限に続くことを防ぎやすくなります。

5.解体する

建物の劣化が進み、修繕して利用する合理性が低い場合は、解体も選択肢です。ただし、解体すれば必ず問題が解決するわけではありません。土地の利用方法、売却可能性、接道条件、固定資産税等への影響などを確認してから判断する必要があります。税制や補助制度は年度によって変更されることがあるため、解体前には税理士、行政、不動産・建築の専門家などに最新条件を確認してください。

売る・貸す・直す・残す・解体するを書き出したノートと電卓、家の模型

京都で実家を整理するときは「不動産」と「建物」を分けない

実家の相談では、不動産会社には「いくらで売れるか」、工務店には「いくらで直せるか」と別々に相談することがあります。しかし、本当に知りたいのは、それぞれの金額だけではないはずです。

たとえば、500万円をかけて直す価値があるのか。それとも現状のまま売却した方がよいのか。少し修繕すれば賃貸できるのか。解体して土地として扱う方がよいのか。こうした判断には、不動産としての市場性と、建物としての状態の両方を確認する必要があります。

特に京都市内には、築年数の古い戸建て、連棟住宅、狭小地、私道に面した住宅など、建物だけ、土地だけでは判断しにくい物件があります。だからこそ、最初の相談段階で結論を決めるのではなく、複数の選択肢を同じテーブルに並べて比較することが重要です。

2026年秋から始めるなら、この順番で整理する

期限が近づくと、「とにかく登記」「とにかく売却」と、一つの行動に集中しがちです。しかし、実家全体の整理としては、次の順番をおすすめします。

まず、登記事項証明書などで現在の名義と対象不動産を確認します。次に、相続人と遺産分割の状況を整理し、登記について司法書士や法務局へ相談します。並行して、建物を現地で確認し、雨漏りや傾き、設備、外壁・屋根、残置物など、利用する場合の課題を把握します。そのうえで、不動産としての市場性を確認します。売却価格だけでなく、賃貸需要や改修後の活用可能性も比較します。最後に、家族で「売る・直す・貸す・残す・解体する」の5案を比較し、いつまでに判断するかを決めます。

この順番なら、登記の期限を守ることと、実家の将来を落ち着いて考えることを両立しやすくなります。

京都市には空き家の相談制度もあります

京都市では、2026年度も「空き家活用・流通支援専門家派遣制度」を実施しています。地域の空き家相談員と建築士が現地を訪問し、空き家の活用方法、流通、修繕などについて助言や情報提供を行う制度で、相続や登記で困っている場合には司法書士への相談につながる仕組みも案内されています。また、地域の空き家相談員による相談会も開催されています。

行政制度は「売却ありき」ではないため、まず状況を整理したいという方にとっても選択肢になります。制度の対象、受付状況、利用条件は変更される場合がありますので、利用の際は京都市公式サイトで最新情報をご確認ください。

まとめ|期限は意識する。でも実家の結論まで急ぐ必要はありません

2024年4月より前に相続した不動産で、まだ相続登記が済んでいない場合、2027年3月31日は重要な期限です。半年という時間は、何もしなければ短い一方、順序を決めて動けば、登記と実家の今後を整理するための時間として十分に活用できます。

大切なのは、「登記をする」「建物を見る」「不動産としての可能性を見る」「家族で選択肢を比べる」という四つの作業を混同しないことです。

実家は、必ず売らなければならないわけではありません。直して住む。貸して活用する。一定期間残す。建物の状態によっては解体する。そして、条件が合えば売却する。

株式会社京都アシスト/トスクホームでは、建築と不動産の両方を扱う立場から、最初から売却を前提とせず、実家の状態とご家族の意向を整理しながら選択肢を比較することを大切にしています。「何から確認すればよいか分からない」という段階でも、まずは権利関係・建物・活用方法を分けて整理するところから始めてみてください。

Q&A:よくあるご質問

Q1. 2024年4月より前に親が亡くなった場合も、相続登記の義務化の対象ですか?

A. はい。法務省の案内では、2024年4月1日より前に発生した相続も対象です。相続で不動産を取得したことを知っている場合、経過措置として原則2027年3月31日までの申請が必要です。個別事情によって扱いが異なる可能性があるため、法務局や司法書士へご確認ください。

Q2. 相続登記をしないとどうなりますか?

A. 正当な理由なく義務に違反した場合、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。また、名義が整理されないまま次の相続が起きると、関係者が増えて手続きが複雑になることがあります。

Q3. 相続登記をしたら、実家はすぐ売らないといけませんか?

A. いいえ。相続登記と売却は別の判断です。売るほかにも、直す、貸す、残す、解体するといった選択肢があります。

Q4. 古い実家でも貸すことはできますか?

A. 建物の状態、立地、賃貸需要、法令上の条件などによります。修繕費と想定賃料を比較したうえで、収支だけでなく安全性や管理方法も含めて判断する必要があります。

Q5. 売るか直すか決められない場合、どこから始めればよいですか?

A. まず名義・権利関係を確認し、その次に建物の状態と不動産としての市場性を確認する方法があります。結論を決めてから相談する必要はありません。

Q6. 京都市の空き家相談制度は無料ですか?

A. 京都市は地域の空き家相談員や専門家派遣などの支援制度を案内しています。2026年度の制度内容では無料で利用できる支援が案内されていますが、対象条件や受付状況は変更される可能性があります。申込み前に京都市公式情報をご確認ください。

参考・引用元

  • 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
  • 法務局「相続・遺言に関する手続のご案内」
  • 京都市「令和8年度空き家の活用・流通支援制度の受付開始」
  • 京都市「不動産(空き家等)の相談会開催情報」
  • 京都市版空き家バンク「京都安心すまいバンク」

※ 本記事は2026年9月25日時点で確認できる公的情報をもとに一般的な考え方を整理したものです。税務・登記・法令・補助制度・費用等は個別条件や制度改正により異なります。実際の手続きや意思決定の際は、行政、司法書士、税理士その他の専門家に最新情報をご確認ください。

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