本記事で扱う5つの観点(目次)
- まず「何を所有しているのか」を確認する
- 京都では、建物と同じくらい「道」を見る
- 「自分の家だから一戸だけ壊せる」とは限らない
- リフォーム費用は「坪数」だけでは決まらない
- 「長屋だから売れない」も早すぎる判断
先に結論を言います。長屋だから売れない、直せない、壊せないと決めつけないでください。でも、普通の一戸建てと同じように考えるのも少し危険です。
長屋は「見た目」だけでは判断できない
外から見ると玄関も別、住んでいる家族も別、一軒ずつの家に見える。でも壁を接していたり、屋根がつながっていたり、構造の一部が一体になっていることがあります。ただし長屋だからといって、すべて同じ権利関係ではありません。土地、建物、共有部分、通路、隣との取り決めは物件によって違います。「長屋ならこうです」という答えを、見ただけで出さないことが大切です。
1. まず「何を所有しているのか」を確認する
最初に確認するのは、「自分たちは一体何を所有しているのか」です。まず土地。どこからどこまでが自分の土地なのか。次に建物。建物はどのように登記されているのか。そして隣との壁、屋根、雨どい、配管、通路がどうなっているのか。
古い長屋の場合、親御さん自身も「昔からこうだったから」というだけで、詳しい権利関係までは把握されていないことがあります。昔の図面がない、増築した時期もわからない、隣との約束は口約束だった、というケースもあります。ですから最初から「いくらで売れますか?」ではなく、まず「この不動産は今どういう状態なのか」を知ることがスタートです。
2. 京都では、建物と同じくらい「道」を見る
京都市には、幅4メートル未満の細街路が数多くあります。路地、袋路。人は通れるけれど車は入れない道。長屋が、こうした場所に建っていることもあります。ここで大事なのは、見た目に細いから「再建築できませんね」と決めないこと。反対に、昔から道として使われているから「普通に建て替えられますね」とも限りません。
その道が建築基準法上どのような扱いなのか、敷地がどう接しているのか。ここを確認する必要があります。京都市には、袋路などについて周囲の建物を含めて安全性や防火性を確保しながら建替えなどの可能性を検討する連担建築物設計制度もあります。京都の路地奥の長屋は、現地を一目見ただけでは答えが出ない物件があるんです。
3. 「自分の家だから一戸だけ壊せる」とは限らない
ここは、ぜひ覚えておいてください。例えば5軒つながった長屋の真ん中の一戸を相続したとします。誰も住まないから「うちだけ解体しよう」と思った。でも一度立ち止まってください。長屋では、隣と接していた壁が一戸を取り除いた瞬間、外壁になることがあります。そうなると雨への対策、防火、断熱、屋根の納まり、構造への影響、残る隣家への処置など、いろいろなことを確認しなければなりません。さらに、その壁や屋根が権利上どう扱われているのかも物件によって異なります。
つまり「自分名義だから、自分のところだけ自由にできる」とは限らない。ここが普通の一戸建てと大きく違うところです。解体業者へいきなり見積りを頼む前に、まず建物がどうつながっているのか、権利関係はどうなのかを整理した方がいいと思います。
長屋の一戸だけを解体すると、残る隣家の壁や屋根が想定外の負担を受けることがあります。TSC HOMEでは、不動産・建築の両方の視点から権利関係と構造の両面を確認するご相談を承っています。
4. リフォーム費用は「坪数」だけでは決まらない
壊さずに直して使う。これは十分考えられる選択肢です。ただ、長屋の場合は普通の一戸建てとは工事条件が違うことがあります。隣家との壁、防音、断熱、防火、構造、屋根、給排水。そして工事の搬入経路です。京都の路地奥なら、家の前までトラックが入れない、材料を人の手で運ぶ、廃材も人力で外まで出す、大きな重機が使えない、足場にも工夫がいる、ということがあります。
だから、インターネットで「30坪の古民家リノベーションなら〇〇万円」と見ても、その数字だけでは判断できません。工事費は何を直すかだけでなく、「どうやって工事できる場所なのか」でも変わるんです。
5. 「長屋だから売れない」も早すぎる判断
不動産として考えるとき、「こんな古い長屋、売れないですよね?」と言われることがあります。でも、そこもすぐには決めない方がいいと思っています。もちろん普通の一戸建てと比べると、接道、権利関係、建物の状態、改修のしやすさ、融資の受けやすさといった条件から、購入できる方が限られるケースはあります。でも「条件が難しい」ということと「価値がない」ということは同じではありません。
立地がいい、京都らしい建物として魅力がある、店舗や事務所に向いている、賃貸住宅として再生できる可能性がある、隣の所有者にとっては意味のある不動産かもしれない。いろいろな可能性があります。そして京都では、その長屋が京町家に該当する可能性も確認してください。京町家は一戸建てだけとは限らず、一定の条件を満たす長屋建ての建物も含まれます。該当する場合、改修や活用について相談できる制度がある一方、解体については、特に指定された京町家で原則として解体着手の1年前までの届出が関係する場合があります。「古い長屋だから、壊して土地にして売ろう」と決める前に、まず「この建物は何なのか」を確認する。京都では、この順番が大切です。
相続した長屋で確認する5つ(まとめ)
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| ①権利関係 | 土地・建物の登記、共有部分、隣との取り決め |
| ②前面道路と接道 | 建築基準法上の扱い、指定道路図の確認 |
| ③隣家との構造 | 壁・屋根・構造がどうつながっているか |
| ④建物の状態と工事条件 | 搬入経路・重機使用の可否・足場条件 |
| ⑤これからの使い方 | 売る・貸す・残す・直して住む・店舗や仕事場にする |
目的によって、調べることもお金をかける場所も変わります。だから、最初に商品(売る・直す・壊すのどれか)を決めないことです。
Q&A:よくあるご質問
Q1. 隣家の所有者と話したことがありませんが、相談できますか?
A. 問題ありません。まずはご自身の不動産の権利関係・建物の状態を整理することから始められます。隣家との調整が必要な場合も、専門家を交えて進める方法があります。
Q2. 長屋の一戸だけをリフォームして貸すことはできますか?
A. 可能な場合が多いですが、隣家との壁の防音・防火・構造への配慮など、通常の一戸建てにはない確認事項があります。工事前に建物のつながり方を調査することをおすすめします。
Q3. 京町家に該当するかどうかはどこで確認できますか?
A. 建築年代や構造など複数の条件が関わるため、京都市の京町家に関する相談窓口や、建築の専門家への確認をおすすめします。TSC HOMEでも現況確認のご相談を承っています。
Q4. 長屋の一戸だけをリフォームして貸し出すことはできますか?
A. 可能な場合が多いですが、隣家との壁の防音・防火性能、構造への影響など、通常の一戸建てにはない確認事項があります。工事の前に建物のつながり方や、隣家との取り決めの有無を調査することをおすすめします。
Q5. 長屋を売却する場合、相場はどのように調べればいいですか?
A. 長屋は権利関係や接道条件によって価格の幅が大きく、一般的な戸建て相場をそのまま当てはめることが難しい物件です。同じような条件(接道・構造・権利関係)の成約事例をもとに、個別に査定を受けることをおすすめします。
曳家や減築という選択肢もある
長屋の活用方法として、あまり知られていないのが「曳家(ひきや)」や「減築」です。曳家は建物をそのまま移動させる工法、減築は建物の一部を取り除いて規模を縮小する工法で、いずれも構造や権利関係の調査を前提に、既存不適格な部分を解消しながら建物を活かす方法として検討されることがあります。すべての長屋で使える方法ではありませんが、「壊すか直すか」の二択だけで判断する前に、こうした選択肢の存在も知っておくと、可能性の幅が広がります。
本記事の内容は、YouTubeチャンネル「Re:HOME」の動画でもわかりやすく解説しています。次回は「再建築不可物件は本当に売れないのか」を公開予定です。
※ 動画URLは公開後にこちらへ追加してください。
長屋・連棟住宅の相続は、権利関係・接道・隣家との構造という3つの視点をあわせて確認することが大切です。不動産と建築の両方に携わる私たちが、調査からご相談まで対応いたします。
ご不明な点は、TSC HOME|トスクホーム(株式会社京都アシスト)までお気軽にお問い合わせください。
※ 本記事は一般的な考え方の整理を目的としたものであり、個別の権利関係・法律判断を保証するものではありません。具体的な手続きについては専門家へ個別にご相談ください。
参考・引用元
- 京都市「細街路対策・連担建築物設計制度」https://www.city.kyoto.lg.jp/toshiken/page/0000246657.html
- 京都市「京町家の保全・継承に関する取組」https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000239530.html
※ 本記事中の制度・法律に関する情報は執筆時点のものです。最新情報は各公式サイト・担当窓口にてご確認ください。