本記事で扱う5つの観点(目次)
- 最初に聞くのは「家をどうする?」ではない
- 家の資料をまとめた「実家ファイル」を一つ作る
- 土地だけでなく「建物の状態」を見る
- 売る・貸す・残すを、まだ決めない
- 兄弟・家族に「知らなかった」を残さない
あわせて、今日からできる小さな一歩と、相談前によくいただくご質問もまとめました。まだ何も決まっていない段階でも、最後まで読んでいただければ、実家との向き合い方が少し軽くなるはずです。
なぜ「元気なうち」に考えることが大切なのか
私たちは京都で、不動産と建築、両方の仕事に関わっています。そのなかで実家や相続についてのご相談をいただくたびに、「もう少し早く、家族で話しておけばよかった」という言葉を耳にすることがあります。
家は誰の名義なのか。土地はどこまでなのか。親はこの家を本当はどうしたかったのか。兄弟はどう考えているのか。何もわからないまま、ある日突然「さあ、どうしますか」となってしまう。これが、後になるほど大変になります。
元気なうちに考えるというのは、相続の準備を急ぐことではありません。私たちは、「家族の選択肢を残しておくこと」だと考えています。今日ご紹介する5つは、どれも今日中に結論を出す必要のないことばかりです。まずは知っておいていただくことから始めてみてください。
実際にご相談いただく中で多いのは、「親が入院や介護をきっかけに、突然、実家の話をせざるを得なくなった」というケースです。気持ちの整理がつかないまま、限られた時間の中で、売却・処分・名義変更を決めなければならない。この状態は、ご家族にとって大きな負担になります。逆にいえば、親が元気で判断力もはっきりしているうちであれば、時間をかけて情報を集め、家族全員が納得できる形を探ることができます。「今すぐ答えを出す」ためではなく、「いざというときに慌てない」ための準備、と捉えていただくとイメージしやすいかもしれません。
1. 最初に聞くのは「家をどうする?」ではない
何から始めればいいのか。いきなり「この家、将来どうするの?」と親御さんに聞かなくても大丈夫です。それよりもまず、「これから、どんな暮らしがしたい?」と聞いてみてください。
- この家でずっと暮らしたいのか
- 庭の管理が大変になっていないか
- 階段やお風呂に不安を感じていないか
- 将来はもう少し便利な場所へ移りたいのか
- 子どもたちにこの家を残したいのか、それとも自由にしていいと思っているのか
これは不動産の話のようで、実は人生の話です。家をどうするかを決める前に、その家で暮らしている人が、これからどう暮らしたいのかを聞く。私たちは、これが一番大切な順番だと考えています。
2. 家の資料をまとめた「実家ファイル」を一つ作る
次に、家の資料を一か所に集めてみてください。完璧な整理でなくて構いません。「実家ファイル」くらいの気軽さで十分です。まずは、家についての情報がどこにあるのかを知っておくことが目的です。
「実家ファイル」に入れておきたい資料の例
| 分類 | 資料の例 |
|---|---|
| 税金関係 | 固定資産税の納税通知書 |
| 権利関係 | 土地・建物の登記関係の資料 |
| 取得時の資料 | 購入時の契約書、建築確認などの資料、測量図 |
| 借入関係 | 住宅ローンなど、借入が残っていればその資料 |
※ 全部そろわなくても構いません。「これは何の書類だろう?」という状態のまま、まず一箇所に集めておくだけでも十分です。
それだけでも、いざというときの家族の負担はかなり変わります。
3. 土地だけでなく「建物の状態」を見る
三つ目は、土地だけでなく、家そのものの状態を見ることです。相続不動産の話になると、どうしても「この土地はいくらになるか」に意識が向きがちです。ですが、建物の状態によって、これから取れる選択肢は大きく変わります。
- 雨漏りの有無
- 屋根や外壁の状態
- 床下の状態
- 給排水設備の状態
- 耐震性
- 増築している箇所の有無
「古い家だから壊すしかない」と思っていても、調べてみるとまだ活かせるかもしれません。逆に「残したい」と思っていても、これから相当な修繕費が必要になるとわかることもあります。「いくらで売れるか」だけでなく、「この家に、これからどんな可能性があるか」という視点も持っていただきたいところです。不動産と建築の両方から見ることには、こうした意味があると考えています。
「売る」「残す」の判断は、不動産会社1社だけの意見に頼らず、不動産・建築それぞれの視点を持つ専門家に一度相談してみることをおすすめします。TSC HOMEでは、不動産と建築の両方の視点から現況を整理するご相談を承っています。
4. 売る・貸す・残すを、まだ決めない
四つ目。まだ答えを決めなくて大丈夫です。実家には、売る、貸す、自分たちで使う、子どもに残す、しばらく持つ、改修して活かす、場合によっては建物を解体して土地として考える、といった複数の選択肢があります。
大切なのは、最初から一つに決めないことです。「誰も住まないから売る」と思っていても、調べてみれば貸せるかもしれません。反対に「思い出があるから絶対残す」と思っていても、税金や修繕、庭の管理まで考えると、次の世代に大きな負担を残すことになるかもしれません。
実家の主な選択肢と、考えておきたいポイント
| 選択肢 | 向いているケース | あわせて確認したいこと |
|---|---|---|
| 売る | 住む予定がなく、維持の負担を減らしたい場合 | 売却時期・税金(譲渡所得)・特例の適用可否 |
| 貸す | 手放す決断はまだできないが収益化したい場合 | 賃貸需要・修繕費・管理の手間 |
| 残して住む・使う | 実家に愛着があり将来的に活用したい場合 | 建物の状態・耐震性・改修費用 |
| しばらく保留する | 今すぐ決められない、家族の意見がまとまらない場合 | 空き家の管理方法・固定資産税の負担者 |
※ どの選択肢にもメリット・注意点があります。ご家族の状況によって最適な答えは変わりますので、一つの目安としてご覧ください。
感情だけでも決めない。お金だけでも決めない。親の気持ち、家族の気持ち、建物の状態、不動産としての価値、維持するお金。一度、全部をテーブルの上に並べてみてください。答えは、そのあとで構いません。
5. 兄弟・家族に「知らなかった」を残さない
五つ目。親御さんだけでなく、できれば兄弟や家族とも、少しずつ情報を共有しておいてください。「お父さんは、この家を残したいと言っていたよ」ということを長男だけが知っていて、妹さんは知らない。固定資産税を誰が払っているのか、一人しか把握していない。こうした情報の差が、後々、家族の意見の違いにつながることがあります。
まだ結論を出さなくても構いません。「今こうなっているよ」「親はこう考えているみたいだよ」という情報だけでも家族で共有しておく。それだけで、相続が起きたあとのスタート地点が大きく変わります。
今日からできる一歩
ここまで読んで、「うちも、そろそろ考えた方がいいかな」と思われた方。今日、すべてをやる必要はありません。一つだけで十分です。
次に親御さんと会ったとき、「この家、将来どうする?」ではなく「これから、どんな暮らしがしたい?」と聞いてみる。あるいは、実家にある書類を一緒に探してみる。それだけで構いません。大きな問題ほど、一気に解決しようとすると動けなくなります。ですが、小さな一歩なら動けます。そしてその一歩が、数年後のご自身やご家族を助けてくれることがあります。
お盆やお正月の帰省、法事など、家族が顔を合わせるタイミングは、実はこうした話を切り出しやすい機会でもあります。「最近、テレビでよく相続の話題を見るね」といった軽い雑談から始めるだけでも、次に本題へ進みやすくなります。無理に一度で結論まで話そうとせず、何回かに分けて少しずつ共有していく、というくらいの心構えで十分です。
Q&A:よくあるご質問
Q1. まだ売るかどうか決めていませんが、相談してもいいのですか?
A. もちろん大丈夫です。むしろ、決めていない段階だからこそ、一度整理する意味があります。不動産として見る、建物として見る、残した場合・直した場合・貸した場合・売った場合、それぞれの可能性を並べてみることが、判断材料になります。
Q2. 兄弟の中で意見がまとまっていなくても相談できますか?
A. 相談いただけます。意見がまとまる前の段階で、事実(登記状況・築年数・税金の状況など)を整理しておくことが、後の話し合いをスムーズにします。まずは代表の方お一人からのご相談でも問題ありません。
Q3. 税務や法律の専門的な判断が必要な場合はどうなりますか?
A. 私たち自身は宅地建物取引士ではありませんので、具体的な不動産取引については社内の有資格者と確認しながら対応いたします。税務や法律など専門的な判断が必要な場合は、必要な専門家と連携して進めますので、まずはお気軽にご相談ください。
Q4. 実家が古い家(築40年以上など)でも相談できますか?
A. 問題ありません。むしろ築年数が経過した建物ほど、「土地の価値」と「建物の状態」を分けて見ることが重要になります。私たちは不動産と建築の両方に携わっているため、老朽化の程度や修繕の必要性を含めて現況を整理したうえで、売る・貸す・残す・活用するといった選択肢をご提案できます。京都市内には長屋や再建築不可物件など、判断が難しい建物も多くありますので、そうした物件のご相談も歓迎です。
まとめ:実家のことを考えるのは、片付けることではない
実家のことを考えるというのは、親の人生を片付けることではないと考えています。親が大切にしてきたものを受け取り、今度は自分たちの暮らしに合う形へつないでいくこと。残すこともある。手放すこともある。形を変えて活かすこともある。どの答えでも構いません。
ただ、何も知らないまま、突然決めなければならなくなるより、元気なうちに少しだけ話しておく、少しだけ調べておく。そこから、家族のこれからは変わっていくかもしれません。もし今、実家のことがずっと心のどこかに引っかかっているなら、今日、一つだけ動いてみてください。
本記事の内容は、YouTubeチャンネル「Re:HOME」の動画でもわかりやすく解説しています。次回は「古い家を残すときにかかるお金|京都の古い住宅ならではの注意点」を公開予定です。
※ 動画URLは公開後にこちらへ追加してください。
実家の相続は、親が元気なうちに準備を急ぐ話ではありません。京都で不動産と建築の両方に携わる私たちが、家族の選択肢を残すために今からできる5つのことをご紹介しました。
ご不明な点は、TSC HOME|トスクホーム(株式会社京都アシスト)までお気軽にお問い合わせください。相続・空き家に関するご相談は、初回60分まで無料です。
※ 本記事は一般的な考え方の整理を目的としたものであり、個別の税務・法律判断を保証するものではありません。具体的な手続きについては、専門家へ個別にご相談ください。
参考・引用元
- 法務省「相続登記の申請義務化」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法について」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000055.html
※ 本記事中の制度・法律に関する情報は執筆時点のものです。最新情報は各公式サイト・担当窓口にてご確認ください。